展示会場の様子 

見学者:株式会社e-front 大橋 政也

展示会概要

平成29年3月9日(木)〜10日(金)の2日間に渡り、「ITProEXPO 2017」がザ・プリンスパークタワー東京にて開催されました。
ITProEXPO 2017は「Cloud Days 東京 2017」「ビッグデータEXPO 東京 2017」「セキュリティ 東京 2017」「モバイル&ウエアラブル 東京 2017」「IoT Japan 東京 2017」「ワークスタイル変革 東京 2017」「デジタルマーケティング 東京 2017」「FACTORY 2017 Spring 東京」という、8つの展示会の複合開催でした。

私はITProEXPO 2017に参加、調査することで、弊社の主力商品「Falcon(旅行業管理システム)」へ連携、応用できるサービスや情報の収集、今後開発するシステムへの技術的知識の獲得につながると考え、この度の「若手エンジニアITトレンド調査委託企業の募集」に応募し、採用いただきました。

本レポートでは、ITProEXPO 2017の開催された2日間に行った、現地調査の内容について報告します。

報告

展示会全体の様子

初日の入場の時点で受付には行列が出来ており、来場者の多さからこの開催内容への関心の高さを感じました。主な展示はクラウド関係で、クラウドサービスであるAmazon AWS、Microsoft Azure、VMWare Workspace ONE、IBM Bluemixのブースがとくに展示会場の多くのスペースを占めていました。

展示会場と併設して、セミナー会場が設けられており、出展社による自社製品や技術を紹介するセミナーが開催されていました。神戸市市長によるセミナーもあり、非常に幅広い分野のセミナーが行われていました。

クラウド業界のトレンド

昨今のクラウドサービスは、ただスケーラビリティのある環境を用意するIaaS的なものではなく、PaaSやSaaSの層もフォローするソリューションとしてのサービス提供に変わってきています。人工知能やビッグデータとの連携が、クラウドサービスの一環として提供されてきており、環境を借りればすぐにでも最新の技術に触れることができるようになっています。

一昔前はクラウドといえば複雑なシステムで、規模がどんどん大きくなるサービスに活用されるものでしたが、小規模システム向けのクラウドサービスも増えてきており、小規模システムからのクラウド導入も進められるようになってきています。

聴講したセミナー

イノベーションのエコシステムの構築を目指して

神戸市 市長 久元喜造 氏

IT企業ではない方がこういったセミナーの講師を務められることは稀な例だと思います。神戸市は大きな事業として神戸をICTによる活気ある街にする活動を推進しています。その柱として「若者が挑戦できる街」にする体制があります。500 Startupsというシリコンバレーの企業を誘致し、大学生がビジネスのスタートアップについて学び、そのまま実践まで移せる体制を整えています。市役所内に民間のIT企業から人材を登用し、従来の堅苦しさのない行政を可能としています。

また、ルワンダと協力し、ABEイニシアティブに取り組んでおり、神戸にはアフリカからの留学生が大勢留学に訪れています。また神戸からもルワンダへICT教育のために大学講師として人材を派遣しており、1994年のルワンダ虐殺からの復興を目指す若者たちに希望を与えています。

行政に民間のブレインを取り込むという取り組みが非常に先進的だと感じました。ルールに縛られすぎて動きの硬い事業しかできない今の日本の行政から、一歩進んだものを感じました。また、東京や大阪ではなく、「日本でスタートアップといえば神戸」と定着させるための本気の努力と、フロンティアに立つという気概を感じました。

AI(人工知能)や先進技術を素早く取り込みビジネス価値を生み出すクラウド・プラットフォーム

日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長 三澤 智光 氏

BlueMixというIBMの提供するクラウドプラットフォームは、オンプレミスなサービスからクラウドへの移行を推進するための様々な手法が取られていました。オープンスタンダードなテクノロジーを用いて、既存システムをそのままクラウドへ移行できるように様々なサービスが提供されています。例えばデータベース関連のソフト、コンテナ管理のDockerやNode.jsといった、よく使われる環境がほんの数クリックで整います。他にも、ベアメタルな環境を用意できたり、クラウド内での専有環境の提供、顧客の持つデータセンター内でのBlueMix環境の提供もなされていました。

また、基盤構築の早さだけではなく、BlueMix自身が数多くの先進技術を取り込んでおり、人工知能Watsonへの連携、全世界の天候情報ビッグデータへのアクセス、ブロックチェーン技術などをすぐ使うことができます。BlueMix内で使うことができるサービス数は競合他社のクラウドサービスの中でも最多です。言語対応も抱負で、クラウド上でSwiftが使える環境は現状BlueMixのみだそうです。

無料枠もサービスごとに用意されており、小規模システムのテスト段階ではほぼ無料で運用可能とのことでした。クラウドサービスというと少し縁遠く感じていましたが、これなら個人レベルでもすぐ試せそうです。

 

クボタのスマート農業戦略

クボタ 取締役専務執行役員 研究開発本部長 飯田 聡 氏

クボタは日本農業の課題として、農業人口の減少、農家の高齢化、耕作放棄地の増加、小規模農家が淘汰されプロ農家(耕作面積5ヘクタール以上の農家をクボタではプロ農家、担い手と呼ぶそうです)だらけになってしまった現状をあげていました。そこでクボタは大規模農業向けの高性能、高耐久な農機、小規模農業向けの低価格の農機、営農ソリューションの提案、スマート農業の普及に力を入れています。今回はその中でスマート農業について語られていました。

スマート農業の柱となっているKSAS(クボタスマートアグリシステム)は、農業経営をクラウドやICTにより管理し、いままで農家の勘に頼っていた運営を明確な数値により効率的に行うものでした。水分・たんぱくの含有率センサー、収量センサーにより、収穫時にデータが取られ、どの圃場でどんな米がどれだけ取れたかが記録されます。水分量データで乾燥が効率的になり、質の良い米を分類して高い単価で販売することができます。データは次年度の肥料の設計に利用され、全圃場で質の良い米が取れるように調整されていきます。2年間のモニタリングで、15%も収量が増加したそうです。ICTの活用が見事に農業とマッチングしていて、とても感心しました。

運営だけでなく、農機自体も進化しており、手を離しても正確に直進するトラクター、ぶどうなどの収穫時の手をあげた姿勢を支えるパワードスーツ、重い荷物を担ぎ上げることが容易になるウィンチ型のパワードスーツといった、農家の負担を軽減するものをいくつも開発しています。私が驚いたのは手を支えるパワードスーツが単3電池4本で8時間動くということでした。腕を上げ続けるという辛さを解消してくれるものが、こんなに小さなエネルギーで動くとは思いませんでした。スマート農業が広く普及されれば、いまの日本の農業の諸問題も解決されていくかもしれません。

 

クラウド、Web APIの活用とアイデンティティによるアクセス管理

オージス総研 サービス事業本部 テミストラクトソリューション部 副部長
認証技術グループ 上席アーキテクト 八幡 孝 氏

昨今、WebAPIサービスというものが主流化しており、自社でWebAPIを作成する機会も多くなってきました。しかしWebAPIを1から作るとなると、本当に提供したいシステム部分以外の、セキュリティやアクセス管理の部分にも労力を費やしてしまいます。昔はサービスに関わるデータはサーバ機の中に収められ、不正なアクセスはファイアウォール等の物理的な防壁で守られていました。しかしクラウド全盛の今、守るべきデータは壁の外、アクセスするユーザも壁の外という、アクセス自体を監視、制限するセキュリティの守り方に変わってきています。オージス総研のThemiStructはWebAPIの認証基盤となり、認証に関わる煩雑なデータ管理や、アクセス権限等の管理、認証方法の変更への柔軟な対応が可能となっていました。

そのノウハウはとてもわかりやすく、OAuthやOpenID Connectといった認証について図にして説明されていたので大変よく理解できました。今後弊社もWebAPIを公開することになっていくと思いますので、ぜひ活用しようと思います。

 

OSSとリスクの対応

ブラック・ダック・ソフトウェア シニアセールスエンジニア 梶原 史雄 氏

ほとんどの企業がOSSを自然に使用しながらも、その中に潜む脆弱性のことを完全に把握していることはない、というお話を聞いて、非常に身につまされる思いでした。ここ1年ほどで有名になった脆弱性にHeartBleedというOpenSSLの危険な脆弱性がありましたが、ブラックダックソフトウェアの調査によると、今もなおHeartBleedの脆弱性に対して対策のなされていないソフトは存在するそうです。年間3600件も発生するOSSの脆弱性をすべて把握した上で、自社の社員の使う端末およびサーバに導入されているOSSをすべて把握しているか、と言われるとほとんどの人はYesとは言えないでしょう。OSSについてはいまだ一覧表管理の形で管理している企業が大多数だそうで、どのバージョンを使っているか正確に把握するのは難しいです。そこをブラックダックはシステムで端末をすべて管理、アプリケーションの内部に使われているOSSを自動で検知、最新の脆弱性情報もキャッチすることでサービスへの修正パッチを迅速にあてることを可能にしているそうです。

確かにこんな大掛かりにセキュリティの管理をするには社員がつきっきりでやっても間に合わないでしょう。こういった煩雑な管理も、クラウドでビジネス化できるというのはよい例だと思います。

総括

2日間参加しましたが、会場は常に人で溢れていました。展示会場には小さな企業用シアターが用意されており、15分の短い講演がたくさん開催されていました。ここには書ききれないほど参考になる情報があり、とても有意義な調査となりました。Webで情報を見るだけでなく、その場で見て、聞いて、感じることで、いままで漠然としていたことが、知識として形を得られたように思います。展示ブースではこちらが疑問に思ったことをすぐ聞くこともでき、やはり顔を合わせた交流というのはいいものだなと思いました。

様々な分野の情報を得ることで、サービスへの新しい機能の導入時に役立つ経験となりました。このような機会を与えてくださったITOC様に感謝いたします。

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