AI・人工知能EXPO_01

見学者:株式会社イーストバック 本多 功

見学展示会概要

平成29年6月28日(水)〜30日(金)の3日間にわたり、「第1回AI・人工知能EXPO」(主催:リードエグジビションジャパン株式会社)が東京ビッグサイトで開催されました。

近年、注目の高まるAI・人工知能に関する専門展として初めて開催され、110社の企業が出展していました。また、同じ会場で「コンテンツ東京2017」が開催されており、同一の招待券で入場できるようになっていました。合わせて約1,800社弱の企業・団体が出展していました。

私は、昨年よりITOCの機械学習勉強会などに参加しており、AI・人工知能の技術を自社の業務や新サービスに役立てたいと考えています。本展示会で島根では直接触れる機会の少ないAI・人工知能の実際ビジネスでの活用事例や顧客の市場ニーズを調査することにより、自社のサービスを展開する上での課題の検証・技術習得の足がかりにしたいと考え、二泊三日の日程で参加いたしました。

報告

展示会全体の様子

AI・人工知能EXPOとコンテンツ東京が同一の会場で開催されており、東京ビッグサイトの東の6〜8ホールに、ジャンルごとに分かれて出展されていました。

AI・人工知能への関心が高まっていることもあり、受付・入場口は行列ができており会場内もAI・人工知能エリアは通路が通れないほど大変盛況でした。私はタイミングが良かったのか数分で会場内に入れましたが、時間によっては受付・入場に30分要した方もおられたようです。

主催者発表によるとAI・人工知能EXPOの来場者数は約41,700人、コンテンツ東京とは合わせて約80,400人の来場者があったようです。

出展者はAI技術・サービスを提供する企業・研究機関(ディープラーニング、機械学習、ニューラルネットワーク、自然言語処理、ハードウェア、ビッグデータ、AIアプリケーション)となっており、特にAIアプリケーションを展示されている企業が多い傾向にありました。

出展社や参加者の傾向

商談目的の展示会とのこともあり、顧客やビジネスパートナーの獲得を目的とした出展が多い印象でした。ある業種や課題に特化したAIアプリケーションを出展されている企業が多く、特にチャットボット系アプリが目立っていました。

参加者は製造業や小売業、医療業界のような人工知能の自社業務・サービスへの導入に関心をもつユーザ企業と、IT企業のような協業や技術の調査を目的にしている参加者層が分かれている雰囲気でした。

業界トレンド

会場を回っていると「チャットボット」「ディープラーニング」「エッジコンピューティング」という単語をよく耳にしました。

「チャットボット」などのAIアプリケーションを従来業務の改善に利用するサービスが数多く出展されていました。2016年はチャットボット元年とも言われていたそうです。「ディープラーニング」は2010年代より広く使われるようになった機械学習の手法でGoogleのAlphaGoで利用されたことでも有名です。「ディープラーニング」用の機械学習環境やプラットフォーム、サービス活用事例の出展も目立ちました。

「エッジコンピューティング」は初めて聞いた言葉でした。「エッジコンピューティング」はIoTとも関連し、サーバ側に送って処理を行うのではなくユーザに近いデバイス側に計算機基盤を用意し、なるべく分散処理を行う考え方です。人工知能に特化したIoT用チップなども出展されていました。エッジコンピューティングとAI・人工知能を複合した取り組みが今後のトレンドとなりそうです。

興味を持ったサービス

次に、私が興味をもったサービスや製品を紹介します。

機械学習向けGPUサーバのホスティングサービス

さくらインターネット株式会社

機械学習向けGPUサーバのホスティングサービスである「高火力コンピューティング」を出展されていました。ディープラーニングを主とした機械学習は大量の行列計算を行う必要があり計算時間が長く、高いGPUの性能をもったサーバやワークステーションが必要になります。

「高火力コンピューティング」はクラウド上で、GPUサーバ(NVIDIA社製GPU搭載)を従量課金で1時間単位から利用できるサービスです。専用のサーバやワークステーションを購入するより気軽にNVIDIATeslaシリーズなど高い性能をもったGPU環境を利用できます。

私も画像分類の機械学習を行うために、自分のPCで計算処理を行うことがありますが計算に大変時間がかかっています。このようなサービスを利用すれば効率良くなりそうです。

他社の類似サービスとの違いを質問したところ、同様な機械学習用サーバを提供するクラウドサービスと比べて、同じ性能で2分の1の値段で提供できる点やデータ転送量課金などがない点がアピールポイントであるとのことでした。しかし、サーバの電源状態に関わらず利用中は課金が発生することが、他社サービスと比べウィークポイントとのことでしたが、本番利用する場合はあまり問題にならないのではとのことです。

また、標準のOSはUbuntuとなっています。展示会で他の企業様がオンプレミスのGPUサーバを展示されている例も拝見しましたが、どれもUbuntuが標準となっていました。この点について質問すると、ディープラーニング等のライブラリ(Tensorflow、chainer)を利用しようとするとインストール等が難しくUbuntuが一番それらのライブラリを利用するのに適しているとのことでした。

実際のデータセンターで動いているGPUサーバも展示されていましたが、実機購入すると1千万円以上するとのことです。「高火力コンピューティング」は1時間あたり数百円でこのような環境を利用できるので大変魅力的なサービスであると思います。

コミュニケーションAI RECAIUS(RECAIUS フィールドボイス)

株式会社東芝 様

「あなたを想うAI」というキャッチコピーで、コミュニケーションAIサービス「RECAIUS」(リカイアス)を出展されていました。RECAIUSは音声認識、音声合成、翻訳、対話、意図理解、画像認識などのメディアインテリジェンス技術を融合し体系化したサービスとなっており、SaaSやWebAPIなどのクラウドサービスとして提供されています。

ブースでは実機でのデモを交えて、実際の利用現場のイメージが湧くように説明されていました。
今回、RECAIUSのサービスの中で、RECAIUSフィールドボイスというアプリケーションをデモされていました。RECAIUSフィールドボイスは、音声入力を活用することにより、つぶやくだけで作業現場や外出先から報告情報を作成できるサービスです。保守点検、警備、訪問営業、接客業務などのフィールド業務で利用できます。

デモでは保守点検作業の報告をスマホから、報告書の形式に落とし込んで業務報告を作成する様子を紹介されていました。作業時間や作業場所、特記事項などを続けて口に出すだけで、自動で解析してテンプレート項目へ自動的に情報が入力されていました。
現場で手書きでメモを取り、後からPCに打ち込むよりも格段に作業効率が良くなりそうです。現在、保守点検のようなフィールド業務から旅館の仲居さんの情報共有にまで利用されているそうです。私は、介護や在宅医療の現場の情報共有でも利用できるのはと思いました。

RECAIUSフィールドボイスはApp StoreやGoogle Playでダウンロードすることができます(ただし、ライセンスの購入が必要)。また、RECAIUSフィールドボイスで利用している音声認識サービス(WebAPI)は、RECAIUSデベロッパーサイト(https://developer.recaius.io)で利用することができます。

北海道総合通信(HOTnet)様と共同でブースを出展されており、北海道総合通信様はRECAIUSのAPIを用いた、コールセンターサービスを構築されていました。自社のサービスなどへの導入検証でも、既存のAPIサービスが公開されているので、すぐに試せそうです。

レプルエーアイ(チャットボットの作成・実行プラットフォーム)

インターメディアプランニング株式会社 様

株式会社NTTドコモ様と共同開発したチャットボットを簡単にGUIベースで作成・実行ができるプラットフォームである「Repl-AI」を展示されていました。GUIを用いて、プログラミング技術がなくても、質問に受け答えする対話AIチャットボットを簡単に作成することができるサービスです。

Webベースのオーサリングツールでシナリオを作成することにより、誰でも簡単にチャットボットを作成することができる様子をデモされていました。「曖昧表現の認識」、「過去の会話を記憶しての活用」、「雑談機能で自然な会話を継続」などが特徴であるとのことでした。

横浜市がゴミ分別にRepl-AIを適用されている検証中の事例が紹介されていました。ユーザ(横浜市民)がゴミ分別をする際に、ゴミの出し方・分別方法をチャットボットと会話形式で確認できます。
曖昧表現の認識機能により、曖昧な内容をユーザが入力した場合、ユーザに問い直したりすることで、2万語以上に対する分別方法を提示可能です。

どのような学習を行なっているのか質問しましたが、現在この事例では過去の会話からの自動学習機能は利用されていないそうです。自動学習機能をつけてしまうと、偏ったAIになってしまう可能性があるとのことでした。横浜市のゴミ分別アプリでは一月5万コール〜10万コールの問い合わせがあるそうです。

誰でも利用できるWebサービスの形で提供されており、APIの形で外部連携もできるとのことで、私も作成してみたくなりました。
フリープランが用意されており、1ボット限定で1,000コール/月以内ならば、無料でボットを作成することができ、誰でも簡単に試すことができるようになっていました。

セミナー

事前に申し込みが必要な有料・無料セミナーと、申し込みなしに無料で参加できる企業提供セミナーが開催されていました。特に申し込みなしで参加可能な無料セミナーは、席が足りなく1/2が立ち見になるほど盛況となるものが多くありました。私が聴講した中で興味深かったものを紹介します。

こんな○○はいやだ、AIベンチャーのぼやき

株式会社クロスコンパス・インテリジェンス
代表取締役社長 佐藤 聡 氏

2011年に東京工業大学のベンチャーから創業されたクロスコンパス・インテリジェンス様がAIベンチャーとしてやってこられた経験や苦労話、AIの今後などを講演されていました。年間150件の相談がお客様からあり、顧客課題に応じたAIソリューションを提供されています。

AIの活用に関してさまざまな相談があり、それらで苦労された点などをウィットに富んだ切り口で紹介されていました。

その中から特に興味深かった「AI分野で日本が世界で勝つためには?」という観点でお話しされていた箇所がありましたので紹介します。AIによる第四次産業革命の時期であると言われており、日本がAI分野で世界と競い合っていく必要があります。日本のAIが勝つための課題をいくつかあげておられました。

まず、AIの人材の育成が必要な点です。人間なしに最初から全てAIがやってくれれば良いのですが、現在は機械学習などに長けた人材が必要です。人材育成が急務になっています。

2つ目は、計算リソースが足りていないことです。ディープラーニング等の現在主流の手法は計算リソースが必要になります。ディープラーニング専用のチップの開発も必要になるとおっしゃっていました。

3つ目は、データの収集が難しい点です。オープンデータの公開も増えてきていますがまだ少なく、特に個人情報に関するものは保護されており収集が困難です。しかし、それを逆手に取ってGAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)がもっていない日本独自のデータを活用することが重要であるとおっしゃっていました。

これらの課題は量の問題であり、それだけでなく日本はさらにアルゴリズムの研究・開発などの質で勝負していく必要があります。

1社でそれを乗り越えて行くのは大変であり、複数の企業でコンソーシアム化して、人工知能テンプレートや学習データの売り買いする市場などを構想されているそうです。
私は、去年より機械学習の勉強会などに参加し、自社のサービスに活かすことができないかと考えていますが、人工知能、特に機械学習を活かすためにはデータを保有していることが必要だと感じています。1社での取り組みでなく、複数の会社・団体と協力していく取り組みが必要だと感じました。

所感

3日間参加いたしましたが会場は常に人で溢れかえっており、説明を受けるのに順番待ちが発生するような盛況ぶりでした。初回であることもあってか、参加者も出展されている企業・団体も、若干手探りのような雰囲気もありました。

AI・人工知能は2010年代に入り第3次ブームとも言われる波がきており、出展されているサービスの傾向としては、3〜5年程度前からAI・人工知能に関する新サービス・新事業を検討され始められ、この1、2年で製品化に結びついたものが多いと思いました。どの出展企業も新サービスの顧客獲得にたいへん注力されている様子でした。

商談のための展示会であり、説明を受ける方も、課題意識・目的意識をもっていかないと、有意義な情報を引き出すことができない印象を受けました。基本的に製造業や小売業など、サービスのユーザ企業を説明の対象としておられる出展企業が多く、積極的に顧客の課題を掘り出そうとされていました。

私の今までの業務はプログラム開発が主で営業の経験はありませんでしたが、今後新たな顧客やパートナーを見つける上での姿勢で大変参考になりました。

人工知能はあくまで技術であり、現在どんな課題があるかを意識していくことが実際のサービスに人工知能を生かして行く上で重要であると肌で感じました。自社の業務・サービスに人工知能を活かす上で、新技術の収集や、人工知能で課題解決できる問題がないか、アンテナを張るようにしていきたいと思っています。

AI・人工知能EXPO_02

ITOC記入情報

今回の報告書は、「平成29年度若手エンジニアITトレンド調査委託企業の募集」として島根県内IT企業に依頼しました。