視察者:株式会社バイタルリード 岩田 健

1.見学展示会概要

平成30年10月24日(水)〜26日(金)の3日間にわたり、「Japan IT Week」(主催:リードエグジビションジャパン株式会社)が幕張メッセで開催された。このうち2日間 Japan IT Weekを見学した内容について報告する。

2.報告

 

展示会全体の様子

ITWEEK秋1

ITWEEK秋2

出展企業の傾向、トレンド

春の展示会ではLPWAを中心とした無線技術に関するものが多かったが、今回のイベントの出展企業ではデバイス系の企業の出展が比較的少なく、AIに関するサービスを提供する企業が比較的多いように感じた。
また参加者についてはRPAブースを中心にエンジニア以外の方も多く来場されており、働き方改革についての関心度の高さが伺えた。

注目企業

  • sMedio AI Technologies(株式会社sMedio 様)

AIによる各種画像認識のデモが展示されており、顔認識による属性判定で年齢、性別、視線などを判別していた。システムとしてはTensorFlowLiteを採用しており、サーバー側で画像処理するのではなく、エッジ処理で完結するようになっており、画像処理後の属性情報のみをサーバー側に送信する仕組みとなっていた。
これによって通信量を抑えるとともに個人情報保護にも配慮することができ、昨今エッジコンピューティングブームを象徴するデモ内容であった。

  • RPAコンシェルジュ(日本システムウェア株式会社 様)

働き方改革というキーワードと共に一気に広まった分野であるが、内容としては各社一様にプログラミングにおける言語要素を除いて、個別の作業タスクをブロックプログラミングで実現するというものであった。
RPAコンシェルジュはそこにAI、IoTを組み合わせたトータルサービスのRPAを提供しており、この分野の成熟度を知ることができた。一方でエンジニア目線ではサービスの内容や完成度を評価することができるが、実際のユーザーはバックオフィス部門になる。説明員の方によれば、実際に使ってもらうためにはどんなデモよりも彼らの本当の業務の一部を自動化して見せるのが一番心に刺さるというのだということを話されており、技術だけでなく、ユーザー目線に立つ重要性を改めて実感した。

  • データサイエンティスト育成(DATUM STUDIO 様)

昨今、高まるデータ分析に関するニーズに答えるためデータ分析の請負と合わせてデータサイエンティストの育成事業を展開しており入門コースで1人につき90万円ということで非常に高額に感じられた。
しかし実際の業務でデータサイエンティストを雇うと一人100万円~200万円/月でAIモデルの構築も含めるとそれ以上とのことだった。
通常はチーム単位での契約になるので1000万円/月必要になるとすると受講費用にも納得感がでてくる。
ただし自社でデータサイエンティストを育成するにしても容易なことではないので、前段のデータ整理や入力、仕様の整理などを自社で行い、専門的な部分を依頼するのが現状では最も効率的に思われた。

  • EXBeacon(株式会社WHERE 様)

ビーコンによるメッシュ形成、位置測位、データ分析などを一括して行っており、カード埋め込み型の物も扱っていた。3秒間隔ぐらいのBLE通信であれば1年間は電池が持つとのこと。BLEなので基本的には屋内、特にオフィス利用を想定しているが、最近ではBLE端末だけでなく人感センサーなどと組み合わせることにより会議室使用状況の把握なども可能。またオフィス内で席替えがあった場合でもクラウド上管理しているオフィスレイアウトを動的に変更することが可能でBeacom技術をここまでサービスに昇華している例は聞いたことがなく、サービスとしての完成度の高さが伺えた。

  • DeLTA(LEAPMIND株式会社 様)

従来FPGAを扱うためには専用のHWに加えて専用のHDLと呼ばれる専用言語で記述したうえで論理合成などのノウハウが必要な工程を踏まなければ、実機で動作せることができなかった。
非常に専門的な知識が必要であったこの分野に対してクラウドによるGUIベースの開発環境を提供するのがこのDeLTAとなる。必要となる周辺IPとそれに合わせたIFの形式を指定するだけで動作さることができ、非常に扱いやすいという印象を受けた。説明員の方によると既存のGPUベースのソリューションと比べて処理性能は約1/5程度になるが、ソフト処理よりは間違いなく早くなるという位置づけであり、価格や消費電力についても同様に既存の2つのソリューションの中間的ポジションになってくる代物であった。ただし開発環境の利用料が10万円/月ということで割高感はある模様。

  • HelloBUS(シエル 様)

韓国で開発されたバスロケーションシステムで韓国ではトップシェアということで自治体だけでなく、学校や企業の通勤バスなどにも採用されているとのこと。内容も路線検索や遅延情報、各種デバイスと通信できるGateway機能など非常に高機能なものであった。過日に報道されたトヨタ自動車とソフトバンクグループのアライアンスが発表され、MaaSというキーワードが大きく広まったが、今後は国内の大企業だけでなく、海外のSIerの動向にも注視していく必要があると感じた。

  • Eye-Count(株式会社Sayコンピュータ 様)

スマートフォンとクラウドを活用して鉄筋、鋼材などの束を効率的にカウントしてくれるシステムで撮影した画像を解析して瞬時に本数を把握することができるため、在庫管理に便利なシステムだ。解析範囲の設定と検索対象の設定技術が特許になっているとのことだったが、実際には複雑な形状は検出しきれないので予め検索対象の物体の形を登録しておき、検索後に手動で誤りを補正する必要があったが十分実用に足るものに感じられた。

  • MIP(技研商事インターナショナル株式会社 様)

データ分析に高度な分析手法を必要としないならば既成のツールを導入して運用するという手法が考えられる。このMIPはRESASを代表とする各種オープンデータや地図データに加えて多彩な機能を標準サポートしており、自社で収集したデータも組み込み可能とのことだった。利用料も標準ライセンスで38万円/年と安くはないが、データサイエンティストの相場を聞いた後だと十分納得できる価格に感じられた。

  • 山口県、鹿児島市、青森市、仙台市、長野市:

IT企業以外にも地方自治体の出展が複数見られた。出展内容としては一様にIT技術の展示ではなく、企業誘致を狙ったもので、様々な優遇制度を設けて首都圏に企業を地元に招こうという試みであり、地方創生に掛ける各自治体の本気度が伺えた。

所感

今回のイベントではAIの構築環境として従来からあるGPU+ソフト処理という手法に加えて、エッジコンピューティングによるソフト処理やFPGAを利用したものまででてきており、この分野での選択肢が非常に広まったように感じられた。

どの手法が最適解であるかという点に関してはまだまだ技術的な黎明が続くと思われるので今後も動向を注視していく必要がある。

エッジコンピューティングの進歩はデータ取得が中心であったIoT分野が次のステージに移行していく兆しに思えたが、一方で適応分野としては従来通りFA系が中心であり、普及に向けては技術以外にも様々な課題があることを伺うことができた。今後も業界動向に注視しながら情報収集を行い、実践によるノウハウの蓄積を図りつつ新技術の恩恵を社会に還元できるような機会を探っていきたい。

                                               以上

ITOC記入情報

今回の報告書は、「平成30年度若手エンジニアITトレンド調査委託企業の募集」として島根県内IT企業に依頼しました。