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機械学習|レポート Machine learning

共同研究「高齢者のセルフスクリーニングデータ及びバイタルデータと低栄養との関係性等の分析ならびに機械学習技術を用いた低栄養高齢者の予測に関する研究」レポート

2019年07月22日

しまねソフト研究開発センターでは、株式会社テクノプロジェクトと「高齢者のセルフスクリーニングデータ及びバイタルデータと低栄養との関係性等の分析ならびに機械学習技術を用いた低栄養高齢者の予測」をテーマとして共同研究を行いました。

以下に取組の内容を紹介します。

共同研究の概要

今回の共同研究は、株式会社テクノプロジェクトが総務省事業「平成30年度IoTサービス創出支援事業」にて取り組まれたIoTを活用した高齢者栄養支援のモデル創出の一環として行いました。

共同研究の目的

高齢者のセルフスクリーニングデータ及び栄養摂取量のデータと低栄養との関係性等の分析ならびに機械学習技術を用いた低栄養高齢者の予測モデルの構築。

共同研究の内容及び目標

(1) 高齢者のセルフスクリーニングデータ及び栄養摂取量のデータを取得し、低栄養状態(低栄養か否か)との関係性等の分析に取り組む。

(2) (1)で得られたデータ及び分析結果と機械学習技術を組み合わせて、低栄養高齢者の予測モデルを研究・開発する。

共同研究実施期間

平成30年9月3日 ~ 平成31年3月31日

共同研究の成果

本研究では、被験者となる高齢者に対してスクリーニングを実施するとともに、栄養摂取量計を装着してもらいデータを収集・分析しました。そして、スクリーニングの結果から得られる栄養状態(「栄養状態良好」or「低栄養または低栄養の疑い」)を目的変数に設定し、栄養摂取量計から得られるデータから分析の結果を参考に説明変数を生成して、機械学習を用いた予測モデルの構築・評価を行いました。
その結果、特定の条件下において、低栄養の疑いがある高齢者を一定の再現率で分類する機械学習モデルを得ることができました。今回は期間中に収集できたサンプル数が限られており、データの補間等を行っているため再現率の評価には課題を残していますが、今後さらにサンプル数を増やすとともに、機械学習モデルのパラメーター調整等を組み合わせることで、再現率の高いモデルを構築することが期待できます。また、分析により得られた結果から、低栄養の疑いとの相関関係の高い項目に着目することで、栄養指導における新たな指針を提示することも可能になると考えられます。

AIによるデータ分析
(H30-9. IoTを活用した高齢者栄養支援のモデル創出 –成果報告書-より抜粋)

共同研究成果の詳しい情報は、総務省「身近なIoTプロジェクト」の以下のページからご覧いただけます。

共同研究の成果から得られたこと、分かったこと

(1)スクリーニングデータと栄養摂取量のデータに基づく、スクリーニングスコアと栄養摂取量計の各項目値との相関関係等のデータ分析および、栄養摂取量計の計測値からの低栄養・低栄養疑い者を抽出するためのAIモデルの構築

(2)Python, Jupyter notebookを利用したAI分析・モデル構築の手法の習得

今後の事業方針等について

対象を高齢者・低栄養に限定することなく、対象分野の拡大やサンプル数の増加を図り、より幅広い対象の栄養状態の把握や改善に適用するAIモデルを構築する等、ヘルスケアサービスの展開に結び付けたい。また、しまねソフト研究開発センターとの連携によるAIやRPAの活用・適用についても検討していきたいと考えている。

担当研究員からのコメント

しまねソフト研究開発センター 専門研究員 高木 丈智

しまねソフト研究開発センターでは、本研究においてデータ分析における問題設定の検討・提案を行うとともに、データ分析のツールや実行環境、分析手法等の導入支援を行いました。また、分析作業を進める過程で直面した課題に対して、分析の目的や方向性、問題設定を再調整するなど分析活動全体のファシリテーションを行いました。

データ分析や機械学習を適用するAIプロジェクトでは、実際にプロジェクトを進めると、当初の計画通りにデータが取得できない、あるいは、取得したデータに欠損やノイズが多く使えるデータがなかなか集まらないなど、データを用意する段階から様々な問題に直面し、当初の問題設定で分析を進めることが困難になることが少なくありません。そうした場合には、データを集めるための働きかけや、データ補間等の技法を組み合わせるなど、データの確保に取り組むと同時に、現実的に収集可能なデータから問題設定を見直しながら分析を進めることが必要となります。

本研究においても、限られた期間中に高齢者の方々から一定量のデータを収集する必要があり現場では様々な苦労がありましたが、本質的な課題・目的を確認しながら問題設定を調整して分析を進めたことで前述の研究成果を得ることができました。

今後、本研究の成果が応用され、新たな製品やサービスの創出につなげられることを願っています。

 問い合わせ先

公益財団法人しまね産業振興財団 しまねソフト研究開発センター(ITOC) 担当:渡利
〒690-0826 島根県松江市学園南1丁目2−1くにびきメッセ西棟4F
TEL:0852-61-2225 FAX: 0852-61-3322 itoc@s-itoc.jp

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