調査報告【Location Business Japan 2019 】参加レポート

報告者:ミニマルエンジニアリング 石倉淳一

イベント概要

今回視察に訪れたのは、6月に同時開催された5つの展示会「Interop Tokyo」、「デジタルサイネージジャパン」、「APPS Japan」、「Location Business Japan」、「Connected Media Tokyo」です。その中でも、高精度位置情報に関係する技術や、位置情報・空間情報を活用した最新ビジネスが紹介されていた「Location Business Japan」を中心に視察しましたので、その内容を報告します。

イベント名:Location Business Japan 2019
日時:2019年6月12日(水)〜14日(金)
・展示会(12日(水) 10:30〜18:00、13日(木) 10:00〜18:00、14日(金) 10:00〜17:00)
・基調講演(12日(水) 9:15〜、13日(木) 9:30〜、14日(金) 9:30〜)
会場:幕張メッセ(国際展示場/国際会議場)
URL:https://www.f2ff.jp/lbj/
主催:ロケーション ビジネス ジャパン 実行委員会

報告

近年、スマートフォンをはじめとしたモバイルデバイスの急速な成熟化に伴い、様々な位置情報サービスが立ち上がっています。

例えば交通機関関連の アプリでは、単なる乗り換えや交通情報を提供するだけでなく、 ユーザーのいる地域に対応した適切な情報を、適切な場所で、適切なタイミングで提供するようになってきています。また「ポケモンGO」のような位置情報を利用したゲームもヒットするなど、位置情報サービスは生活のなかに浸透しています。

今回の展示では、位置情報に関する最新の周辺技術の社会実装が進行中であること、そしてそれに伴って様々な分野で新しいビジネスの可能性が広がっていることを強く感じる事が出来ました。

技術

位置情報に関係する最近の技術動向の中で印象に残ったものを紹介します。

準天頂衛星システム「みちびき」

準天頂衛星システム「みちびき」とは、準天頂軌道の衛星が主体となって構成されている日本の衛星測位システムのことです。衛星測位は時間帯や場所、衛生配置によって精度が劣化する問題がありましたが、みちびきによって大きく改善されました。

2018年11月から、みちびきは4機体制で運用を開始しています。このうち3機はアジア・オセアニア地域の各地点では常時見ることができ、安定した高精度測位を行うことを可能とする衛星数を確保することができます。

さらに2023年度をめどに7機体制での運用開始が計画されており、より安定した高精度の測位サービスの実現が期待できます。

みちびきの機能

  • GPSの補完:衛星数増加による測位精度の向上(上空視界の限られた都市部を中心に改善が図られる)
  • GPSの補強:衛星測位の精度向上(電子基準点を活用してセンチメートル級精度を実現)
  • メッセージ機能(災害時における危機管理情報や、避難所の情報)

受信機 

みちびきは衛星測位に関して、GPSを補完する衛星測位サービスと、2つの補強サービスを提供しています。

  •  衛星測位サービス:GPSを補完し、ビルなど遮蔽物が多い場所でも安定して位置情報を得ることができる。ただし、精度はGPSと同等の誤差。
  • サブメータ級測位補強サービス:誤差1〜2m
  • センチメータ級測位補強サービス:誤差6〜12cm(静止体)、誤差12〜24cm(移動体)

現在みちびき対応のスマートフォンなどで利用できるのは「衛星測位サービス」のみであり、誤差数cmを実現するセンチメータ級測位補強サービスを利用することはできません。ただし、サブメーター級、センチメーター級に対応した受信機がどんどん増えてきています。

みちびき対応製品リスト:http://qzss.go.jp/usage/products/list.html

例えば、マゼランシステムズジャパン株式会社は、センチメーター級測位に対応したモジュールをサイズ11x11mm以下、単価1万円以下のチップ化する研究開発を進めており2020年3月完成予定としています。このようにどんどん小型化、低価格化が進み、多様なみちびき対応製品が増えることが期待できます。

高精度3次元地図

自動運転や安全運転支援システムなどの実用化に欠かせない高精度3次元地図の現在の整備状況とその進化が印象に残りました。

システムがすべての運転タスクを行うレベル3以上の自動運転では、車載センサーだけでなくみちびきの高精度測位サービスで自車位置の誤差を数センチメートル級まで抑えると同時に、地図情報も誤差の少ない高精度なものが必要となります。さらにそこにはダイナミックデータといわれる車両や歩行者などの動的情報を組みこむことが重要とのこと。

国内では、地図分野や自動車メーカー、測量などの有力プレーヤーが共同出資して設立されたダイナミック基盤企画株式会社が高精度3次元地図のデータ整備に取り組んでいます。

高精度3次元地図を構築するためのデータは、カメラ、レーザースキャナーなどの3次元計測器、GPSなどの衛星測位機器などで構成されるMMS(Mobile Mapping System)という計測システムを搭載した車両を走行させることで収集されます。

現在国内では、全国高速道路・自動車専用道の約3万kmのイニシャル整備が完了という状況です。一般道については2020年4月からの事業化に向けて、人口密集地域など地域性なども考慮した上で整備を開始するということでした。その際に路地など車両でデータを収集し辛い箇所は、人が歩いて計測できるサイズのMMSを準備しているとのことでした。

そして自動運転の対象は車両だけでなく、ドローンも視野に入れられています。株式会社ゼンリンのビジョンは、自動運転向けの高精度3次元地図情報と併せて建物の形状など考慮した空の地図、建物入口情報と組み合わせることで、物流にドローン(空の経路)をシームレスに組み込むというものでした。

屋内位置測位と高精度時刻同期

屋外の場合はGPS衛星を使った位置測位が一般的ですが、残念ながら屋内ではGPS衛星の信号を受信することが出来ず、代替となる技術が必要とされます。

主な屋内測位技術としてWi-Fi、ビーコン(BLE)、歩行者自律航法、画像認識など様々なものがありますがどれも一長一短があって決定的なものは無く、選択や組み合わせが必要です。
その中で、IMES(屋内GPS)とそれに高精度時刻同期機能を追加した「iPNT(indoor Position, Navigation, Timing)」というものが印象に残ったので紹介します。

まずIMES(Indoor MEssaging System)は、国産の屋内測位技術で、みちびきの地上補完システムとして創出されました。既存GPSとの親和性が高い、境界を意識しない屋内外シームレス測位を実現しています。

そしてそのIMESにGPS信号を利用した高精度時刻同期の仕組みを追加したのがiPNTで、屋内空間に高精度な時刻、タイミング、位置座標、メッセージ機能を提供します。設置が容易、受信機が安価に制作できるといったメリットがあります。

IoTでは膨大な情報が行き交いますが、その情報同士の繋がりを作っていくために環境内に分散されているセンサー群の時刻同期のニーズが高まっているということでした。

例えば、建物の各所に設置された振動センサーを計測し建物の健全性を診断しようと思った場合、地震や構造物の振動のセンシングデータには0.001秒のレベルでの同期が要求されるとのことでした。
また、工場などでIoT、AI、ロボティクス等を応用して人と機械が協調して作業を行う場合も、環境内のセンサー群に共通の時刻基準軸があることでより安全性と精度が高まるということでした。

所感

位置情報は人にとっても機械にとってもあらゆる活動に重要な情報で、ゲームやマーケティング領域などすでに活用もされています。その先の、高精度位置情報やそれらを高度に応用した周辺技術の社会実装が既に始まっていることを目の当たりにしました。

準天頂衛星システム「みちびき」によって屋外ではセンチメーター級の精度で位置情報を取得できる衛星測位サービスが既に運用されており、それを活用して高精度3次元地図など周辺の基盤が急激に整備されていっている様子が分かりました。

位置特定の技術と併せて、AIや通信やセンサー技術の進歩によってレベル3以上の自動運転はここ数年で実用化される印象を受けました。実際、国内では2020年までに限定地域におけるレベル4の無人自動運転サービスの実現、2025年めどに自家用車へ拡大目指すというロードマップが掲げられていました。

その中でドローンに関しては、既に配送実証実験が実施されていたり、同一空域での複数ドローンを管理する運行管理システムの実証実験を繰り返していたりと、実用に向けて技術面やシステム面は着実に進んでいました。一方で法制度の整備や最終安全をどう扱うかといった部分が一番難しく、まだ不透明な印象を受けました。

そして今回視察する中で見た、屋内外の時空間情報を高精度でデジタル空間に再現するというのは、モビリティだけでなくVR/AR/MRのように空間をコンピューティングして物理世界とデジタル世界の境界を無くす技術にもとても関係すると感じました。

一見別の文脈に思える技術も実は関係しあっていて、しかもそれらがものすごい速度で社会に実装されていく様子を垣間見たので、引き続き最新の状況に触れながらそれらが産業をどう変えていくのか、自分にどう関わってくるか、何が出来るかを考え続けたいと思います。

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