【開催報告】VRセミナー「VRがもたらす地方の未来」/ SMCN♯04

Date:- 2019/08/08(木)~2019/08/09(金)
Time:1日目(8/8)14:00~17:30
 2日目(8/9)13:00~16:30
Place:1日目(8/8)島根県民会館 303会議室
 2日目(8/9)Higashi Honzan

開催目的

しまねソフト研究開発センターでは、ITOCminiLab と称し、ドローンやVR/AR/MR技術を用いた機器等を整備、県内事業者と共に活用することで、新たな商品やサービス創出に向けたチャレンジを支援しています。
VR(バーチャルリアリティ)は、ゲームやアプリなど、エンターテイメントの分野で広く普及すると共に、医療・福祉分野で活用されるなど、用途は多岐にわたり、過疎・高齢化が進む地方においても、VRを使って地域課題を解決しようという取組が生まれています。また、VRは視聴覚だけでなく、五感の全てを通じて体験できるツールとして、周辺技術の開発も進められています。

今回、「地方と高齢者とVR技術」をテーマに、私たちが直面している社会課題に対して、VRがどう結びつくのか、先端的技術の紹介を交えたセミナーを開催しました。

講師

廣瀬 通孝 氏
東京大学大学院情報理工学系研究科 教授
東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター センター長

青山 一真 氏
東京大学情報理工学系研究科
東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター 助教

主催

地域おこしXR研究会、しまねソフト研究開発センター

当日の様子

1日目(8/8):VRセミナー「VRがもたらす地方の未来」

- 開催内容

  • 講演「VR技術は社会をどう変えるか」/ 廣瀬 通孝 氏(14:05~14:55)

講師の廣瀬氏より、平成における30年間の社会背景を振り返りながら、ビッグデータ時代の到来によって、「リアル世界」から大量のデータを「バーチャル世界」へ取り込めるようになったと紹介されました。データの記録から可視化によって、過去から未来を予測することが可能となった現代、VR技術によって「体験する」「空間を超える」「時間を超える」「感情に作用」が実現することで、「仮想化」の可能性を提示しました。「仮想化」とは、実際には存在しないが機能や効果として存在するも同等のものであり、超高齢社会を迎える時代には労働力を「仮想化」することで経済成長を担う可能性を提示されました。

  • パネルディスカッション(15:00~15:15)

共同主催者である地域おこしxR研究会・山田氏がモデレータとなり、講師の廣瀬氏、青山氏を交えたパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションでは、VR技術において予想外だった技術革新は何なのか質問があり、廣瀬氏は1989年当時にヘッドマウントディスプレイ(以下、「HMD」)の所有・普及が課題であったと語り、驚異的な高性能化・低廉化が進んだことを挙げました。続けて、現代はスマートフォンやHMDに当時の求められていた機能が全て搭載されていると話しました。

青山氏は、これまでHMDの視野角が狭く枠が目障りであったものの、StarVR社の最新VRデバイス「StarVR One」は超広視野角となっており、近年における技術革新を語りました。

参加者からは自社事業に関連した具体的な質問が寄せられ、長らくVR技術の研究に携わっている廣瀬氏ならではのコメントが寄せられるなど、短い時間ながら活発な質疑応答が行われました。

  • 講演「VRにおける先端的インタフェース技術」/ 青山 一真 氏(15:20~16:20)

講師の青山氏は、VR技術を「体験をつくる技術」であると述べ、その体験は外界世界の認識が感覚へ変換され、人間の脳へ「電気信号」によって形成されていると語りました。

そこで、外界世界と人間を接続するのが「インタフェース」であり、人間には五感と体性感覚が存在するものの、現代のVR技術は全て再現可能であると青山氏は話しました。

青山氏は、これまで「電気刺激」に着目したインタフェースを研究しており、特にVRにおける傾き・加速度感覚を提示することができる「前庭電気刺激(GVS:Galvanic Vestibular Stimulation)」に取り組み、バランス感覚の補助によるリハビリテーションなど福祉・医療応用を目指しています。さらに、青山氏は味覚電気刺激や視覚電気刺激なども研究しており、多様な分野への応用が見込まれることから、いかに人間の五感・体性感覚をコントロールしていくかという話題が中心となりました。

  • VR機器体験(16:20~17:30)

講師の青山氏の下、参加者一同でVR機器体験を行いました。徹底した安全管理の元で、参加者一人ひとりがVR機器を装着、先端的インタフェース技術を体感することができました。

- ご参加いただいた方々の声(抜粋)

  • 電気刺激を用いて、様々な感覚を与えることが様々な感覚を与えることができるようになってきているのだなと思いました。他4名
  • VRとは何なのかという認識が変わりました。大変面白かったです。他3名
  • 県内では中々聞くことのできないお話を聞くことが出来、ためになった。他2名
  • VRの話のみならず、社会の内容を絡めて聞くことが出来てためになりました。他2名
  • VRは視覚がメインだと思っていたが様々な感覚に対し使用できることに驚きました。他2名
  • もう少し時間をかけて詳しく聞きたかった。他1名
  • とても興味深かったです。電気を使うことで、こんなにも体の感覚を操作できるとは知りませんでした。
  • 専門外の講演だと思っていたが、企業経営のヒントになる。

2日目(8/9):SMCN #04 電気刺激回路とVRコンテンツ開発

- 開催内容

  • LT「Looking Glassの話」/ 株式会社トルクス 山田 宏道 氏(13:00~13:30)

山田氏は、2日間に渡る本セミナーの主催になっている「地域おこしXR研究会」を主宰しています。山田氏からは、米国・Looking Glass Factory社の3Dホログラムディスプレイ「Looking Glass」の説明と仕組み、製品化に至るまでのエピソードも交えながら、実機を展示して紹介しました。「Looking Glass」で使用技術は、見る角度によって見えるものが変わるレンチキュラーレンズによるもので、ディスプレイは3Dモデルを45通りの角度から見た画像を常に表示しており、レンズを通してそのうちの1枚を見ているという仕組みと説明。実際に、Unityを用いたコンテンツ制作のデモを行い、キャラクターの操作や立体映像の表示を実演しました。

  • LT「Unityとマイコンでデータ通信をする話」/ 太田 悠介 氏(13:40~14:10)

太田氏は、無線モジュール付き低価格デュアルマイコン「ESP32」とUnityの連携にチャレンジしたエピソードを紹介しました。「ESP32」とUnityの利用上の注意や実装における利点を挙げ、開発でつまずいた経験談を交えて語りました。

  • 講演「電気刺激回路のつくり方」/ 青山 一真 氏(14:10~16:05)

青山氏より、前日の講演「VRにおける先端的インターフェース技術」に関連して、よりリアルなVR体験や「電気刺激装置」について具体的に紹介しました。電気刺激の方法について体系的に説明しながら、その中でも「電流制御型刺激装置」の作り方を発表しました。定電流回路の構成やパターンを説明するとともに、電気刺激の手法にも言及され、様々な体性感覚や分野での研究事例を紹介しました。青山氏が研究を進めている電気刺激とVR技術の活用範囲は広く、福祉・医療応用によって人間が生きる上での問題が解決される可能性がある、と話しました。

  • VR機器体験、Q&A(16:20~17:30)

1日目同様、講師の青山氏の下、実際に参加者のVR機器体験を行いました。合わせて、参加者から「前庭電気刺激(GVS)」や将来のライフスタイルに与える影響など、質疑応答が行われました。

- ご参加いただいた方々の声(抜粋)

  • Looking Glass、EPS32、電気刺激などの研究の最先端の話を聞くことが出来て良かったです。他2名
  • 普段のVR系のセミナーよりも技術的な部分を知ることが出来て良かった。
  • 電気刺激についてはじめて知りましたが、デモ体験を通じて今後の生活に入ってくると感じました。
  • VRコンテンツとなるとビジュアルだけになってしまうが、それ以外のコンテンツについての話を聞くことが出来てためになった。

 所感

今回、「地方と高齢者とVR技術」と先端的技術の紹介をテーマとして、普段の仕事で出会うことの少ないアカデミアの視点によるセミナーとなりました。
廣瀬氏、青山氏の講演を通じて感じたのは、VR技術自体に関する言及は少なく、言及されることがあっても産業構造や人の体験を接続するインタフェースとしての文脈でした。
このことから、VRと周辺技術は単なる仮想現実ではなく、体験を再定義するインタフェースであることを強く感じることができました。
廣瀬氏の講演にあった通り、VR技術の黎明期から現代までの変遷、社会背景から産業構造に至るまで網羅的に知ることができ、短い時間ながらもVR技術の潮流を知ることができました。

また、青山氏の2日間に渡る講演は「先端的インタフェース」「前庭電気刺激(GVS)」といった最先端の研究内容であるものの、参加者から「電気刺激」を活用したVRコンテンツやビジネスアイデアが意見交換されたのが印象的で、アカデミアとビジネスの現場がすぐ近くに感じられました。

ITOCminiLabでは、アカデミアと県内企業の融合も含め、今後もxR関連の最新動向を学び、体験機会の場を提供を続けてまいります。

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