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人材育成支援|レポート Human Resource Development Support

調査報告【「Google Cloud Summit ’18 in 大阪」 参加レポート】

2018年11月29日

報告者:ファーエンドテクノロジー株式会社
吉岡 隆行

イベント概要

近年、新規のシステム開発において、既に提供されているモジュール(ライブラリ、フレームワークなど)や製品(サービス)を組み入れて開発する手法が主流となっています。
 特にインフラに関してはGoogle(GCP)、Amazon(AWS)、Microsoft(Azure)などのクラウドサービスを積極的に利用するケースが増えてきました。
その中でも、運用コスト(金銭、人的リソース)の削減などを目的として、サーバレス・アーキテクチャを利用したサービスへの関心が高くなってきているように感じます。
 また、情報管理・共有のためにクラウドのツールを利用するケースも増えており、セキュリティーの強化と共に関心が高まってきています。

 10月24日に開催された、Google Cloud SummitはGoogleが提供しているクラウドサービスの最先端のテクノロジーが学べるビジネス向けのセッションが多数用意されていました。
 サーバレス・アーキテクチャを中心とした様々なセッションに参加してきましたので、ご報告いたします。

イベント名:Google Cloud Summit '18 in 大阪
日時:2018年10月23日(火)10:00 - 17:45
場所:ホテルニューオータニ大阪
 〒540-8578 大阪府大阪市中央区城見1丁目4−1
URL:https://cloudplatformonline.com/2018-Summit-Osaka-Home.html

基調講演

※講演者は非公開

 最初にGoogle Cloud Summitの開催趣旨の説明あり、その後、今回のメインテーマであるクラウド関連のサービスの紹介がありました。
 Googleが提供している主要サービスの紹介として最初にG Suite(オフィスソフト、カレンダー、Gmailなど)の紹介があり、続けてGCP(Google Cloud Platform)の紹介へと続きました。

GSuiteの紹介ではAIを活用した機能の紹介と強力なセキュリティーの話を中心に紹介されました。
 GCPの紹介では、専用回線で全世界を繋いでいる高速なネットワークの紹介や、コンテナ化によるデプロイ環境の統一と管理コストの削減を実現したアプリケーション基盤(GKE)の紹介をされました。
 機械学習とビッグデータの活用方法の紹介では事例紹介の他、デモも交えて紹介があり、非常にわかりやすく説明されていました。

  また、最後にクラウド利用の際に問題となることが多い、セキュリティーのことにも触れ、データの暗号化、透明性・情報公開、第三者機関による認証などの取り組み(セキュリティーガイドラインの作成など。金融、医療、製薬、公共団体などに対応)の紹介をされました。

GCP ではじめる機械学習 ~少ないデータで学習いらずのMLで、ビジネスを加速しよう~

Google Cloud カスタマーエンジニア 吉川氏による当プログラムの紹介セッションで、主にGCPで提供されている機械学習関連のサービスの紹介をされました。

 まずは機械学習の説明から始まり、りんごとみかんの判定を例にとり、まずは色で判定する手法を説明されました。
 その後、色で判断できない画像(白黒画像)だった場合は形で判定をする手法について説明がありました。   ただ、これを独自にモデルを作り学習させるには膨大なリソースが必要になるため、GCPから提供されている、あらかじめ学習済みの画像判定のサービスである Cloud VisionとCloud AutoMLのサービスの紹介がありました。

 Cloud Visionは画像すでに学習済みのモデルを利用して何の画像であるかをタグのような形で取得できるサービスです。Cloud AutoMLはCloud Visionでは判定が難しい独自の判定が必要な場合に利用できるサービスです。

 機械学習を上手に利用する考え方として下記のような順番で試す(考える)と良いとアドバイスがありました。

  1. まずは既存のサービスで解決できるかどうか検討(Cloud Visionなどを利用)
  2. Cloud AutoMLで解決できるかどうか検討する
  3. ML Engineを使う(独自にモデルを作成)

その他、学習させるコツとして、まずは使用したいデータ(判定したいデータ)がどのようなデータか整理し(白黒画像かカラーか)、判定をしやすいデータからトライ&エラーをすすめると良いとも話されました。

 更に、業務に上手に取り込むためには、100%の精度は機械学習では不可能なので、どれくらいの精度以上(正解率何パーセント以上)なら目標を達成できる(利益がでる)のかを考える必要があり、実務にも精通している人も関わることが重要だそうです。

GCPではじめるサーバーレスコンピューティング

Google Cloud カスタマーエンジニア 篠原氏による当セッションのレポートです。

 当セッションでは、App Engine / Cloud Functionsを中心に、GCPのサーバーレスサービスについて紹介されました。
 また CI/CD ワークフローのサーバレスでの利用方法など、サーバーレスアプリケーションの本番環境での運用方法についても紹介されました。

 App Engine / Cloud Functionの説明ではメリットとして、以下の点を中心に説明がありました。

  1. サーバ構築が不要なため、システム開発の工数が削減される
  2. アクセスが急激に増加した際は自動でスケールされる。(オートスケール)
  3. 運用時にも管理工数が少なくて済む(コードに集中できる)
  4. シンプルな課金(時間ではなく使用した分だけ課金)

 また、サーバレス環境におけるモニタリング(監視)についても説明があり、サーバレス環境のモニタリングに求められる要素として以下の点があげられました。

  1. 監視基盤自体がサーバレス
  2. シンプルで容易な設定(手軽に使える)
  3. マイクロサービス間の可視化(複数のサーバレスアプリケーションの監視)
  4. マルチプラットフォーム対応

 続いて、サーバレスアプリケーションにおける、CI/CDに必要な機能の定義として下記のようにあげられました。

  1. 監視基盤自体がサーバレス
  2. 高度な自動化(`git push`時に自動でデプロイなど)
  3. ソースコードのパッケージ化
  4. ブルー・グリーン、カナリーリリースなど柔軟なデプロイに対応

 そして、上記内容を踏まえた上で、最後にApp Engineにコードをデプロイし、ログの監視やデバッグなどのデモを披露されました。

 GCPではサーバレス・アーキテクチャに対応したサービス(App Engine / Cloud Functionなど)はもちろん、統合的にモニタリングを行えるサービス(StackDriverなど)、外部のサービスとも連携可能なCI/CDのサービス(Cloud Buildやリポジトリー管理サービスなど)も充実しています。 

 また、それらのサービスがGUIから簡単に連携でき、かなり使いやすそうな印象を受けました。
 セッション中に幾度か、管理の工数を減らし、開発に集中できるという話をお聞きしましたが、これらのサービスをうまく活用することで容易に実現できるように思いました。

専門家に頼らなくても大丈夫。誰もが使える機械学習。MAGELLAN BLOCKS

株式会社グルーヴノーツ 代表取締役社長最首氏による当セッションのレポートです。

 まずは深層学習(ディープラーニング)についてデモを交えた簡単な説明があり、その後、自社サービスである、MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)の機能紹介と事例の紹介がありました。
 MAGELLAN BLOCKSの紹介ではブロックを組み合わせるだけで機械学習を利用できる機能の紹介と多くの事例紹介がありました。
 利用者の全体の55%が需要予測に機械学習を利用されており、その分野においてはかなりの成果をあげているようです。

 大きな事例としては下記のようなものが紹介されました。

  1. 販売店(チェーン店)での販売数の予測と、仕入れた花のグレードを写真撮影するだけで見分ける。
  2. 通販番組のコマーシャルをどのテレビ局にどの時間帯に流すとどれくらいの効果がでるか予測ができる。
  3. どの業種でどのようなチラシを作ると、どれくらい影響が期待できるか予測する。
  4. 新規出店可否判断に活用(新規出店の売上予測)
  5. コールセンター入電予測(一日にどれくらい電話がかかってくるか)
  6. 入試合格圏(合格ラインの点数)を予測。算出時間10分に短縮
  7. 社内の問い合わせにAIが即時回答

 成功のコツとして、深層学習とはそもそも結果を予測できる人がいることが重要であり、結果と関係がある数値(要因)を理解している人がいることが重要だと説明されていました。
(人間が予測したり計算できることを数値化する。または感や経験を数値化する。)
 判定の精度を上げるためには、その事象に精通した人が関わらないと難しいというお話でした。(エンジニアだけでは難しい)
 また、今後の機械学習の課題として、現在は未来に関してはかなりの高確率で予測ができるようになっているが、その予測に対して最適な選択肢を選び出すのはまだ難しいとのことでした。
 最適解を導き出すには選択肢がほぼ無限にあるために、予測に膨大な時間がかかるようです。
 今後、未来予測に対して瞬時に最適解を導き出せるような研究(コンピューターの進化)が進んで行くと、更に業務のコストを削減できるような時代になるだろうとのことでした。

AI・機械学習ソリューションプラットフォーム「 GennAI 」のご紹介と GCP 活用事例

クラウドエース株式会社 代表取締役CEO 吉積氏による当セッションのレポートです。

 まず、前半部分では自己紹介、会社紹介(業務の紹介、Googleとの関係性、Googleの資格取得者数)などを中心にお話をされました。
続いて、GCPの利用事例として「フルフル」というアプリケーションをApp Engineを中心としたサーバレス・アーキテクチャで構築されたお話をされました。
 サーバレスで構築したため、運用管理にはほとんど工数をかけず(毎月リソースの利用状況の確認程度)に新規機能の開発等に注力できるというお話が印象的でした。

 また、タイトルにもなっている GennAI(ゲンナイ)の紹介では機械学習を導入したいが業務にどのように導入したら良いかわからないというクライアントのために、Googleから提供されているAPIと実際の業務への利用の間にある溝を埋めるプラットフォームを目指して開発に取り組んでいるそうです。
(GCPで提供されている機械学習関連のAPIはそのままでは業務に活かしにくいので、うまく業務に落とし込めるように、様々なAPIを組み合わせてソリューションとして提供することを目指している。)

 現在は議事録のソリューションを開発中で、今後はスマートスピーカーとの連携や自然言語の解析をうまくビジネスに活用するソリューションを提供予定ということでロードマップの説明をされていました。

ユーザー企業が語る、G Suite の活用で実現したワークスタイル改革 大阪編

当セッションでは高見氏(Google Cloud シニア アカウント エグゼクティブ)からの質問に対して、長友岡氏(フジテック株式会社 常務執行役員 情報システム部 以下N氏)と柳瀬氏(株式会社グッデイ 代表取締役社長 以下Y氏)が答える形でセッションが進みました。

貴社の事業状況 G Suite導入の背景

 N氏

  • そもそも従業員があまり会社(事務所)にいないので、業務効率化のために、コミュニケーションツールが必要だった。
  • ツールに慣れないので戸惑い、一旦は効率が落ちたが、 ハングアウトの導入をきっかけに利用が促進され、効率が上がってきた。

 気に入っている機能として下記のようにお話しされました。

  • カレンダーとGmailの連携機能で、Gmailに送られてくる旅行会社からの旅程表が自動でカレンダーに登録される機能。(旅程変更のメールがあった場合も自動でアップデートしてくれる。地図も自動で表示可能)
  • カレンダーで個人の予定表と仕事の予定を統合して表示できる。パラレルワークをしている人には会社を跨いだ予定を表示できるので便利。

Y氏

  • 単品、店別の日時の売上データをExcelで集計していたり、情報共有をFAXなどを利用して行なっていた。
  • 効率化を目指し、G Suiteに徐々に移行した。
  • 予定よりも早く浸透しトラブルも少なかった。

 気に入っている機能として下記のようにお話しされました。

  • お店との情報共有 災害時の店舗の営業状況をスプレッドシートで共有し、ホームページへの公開に活用災害時にどこの店がオープンできたなどを共有し、ホームページでオープン情報を公開する。(スプレットシートで共有)
  • GCP(ML)も積極的に活用している 花のグレードを写真によって判定するソリューションを利用中とのこと 

所感として、両者とも業務の効率化を目的として導入され、結果については、それぞれ大きなトラブルもなく効率化が進み手応えを感じている様子でした。

これから G Suite 導入を検討される企業様へのアドバイス

両氏の意見をまとめると、下記のようなアドバイスが上がってました。

  • セキュリティーの観点から、権限を制限しがちだが、全てのサービスを自由に使えるようにする方が良い。
  • すべての機能を自由に使える状態にして、新しいサービスを利用できないか考える。
  • 従来の業務の進め方を変える覚悟が必要。従来のやり方では限界があることを認識する必要がある。(変化にいかに対応できるか)

また、シェア、過去の資産などの問題からMS Officeから移行できない問題については下記のようなアドバイスもありました。

  • Excelはドローイングツールとして使用し、情報共有はスプレットシートというように使い分ける。
  • 一気に切り替えるのではなく、徐々に移行していく。(時間が解決してくれる)
  • 移行し始めるとエクセルを使う局面が減ってきた。
  • Excelよりもスプレットシートの方が便利。起動が早かったり、情報共有がしやすい。(違うパソコンでも簡単に使用できる。)

西日本マーケットに対するご意見

 N氏

  • 本社が東京に行ったり、工場が海外にいったりして、関西の元気がなくなってきた。
  • 面白い人やアイディアはまだまだたくさんあるので、Googleと協力して何かしていきたい。

Y氏

  • G Suiteのおかげで、どこにいても仕事はできるので、地方のハンデは感じない。
  • 飛行機を使えば1時間程度で行けるので、そんなに遠くない。
  • 東京のトレンドが九州まで波及するのに時間がかかる。そのため重要な情報しか波及してこないというメリットもある。
  • ノイズが少ないので、マイペースで仕事ができる。

総括

 今回、Google Cloud Summitに参加したことにより改めてクラウドを取り巻く環境に関して考える機会となりました。
 一昔前はクラウドはセキュリティーに不安があるといったイメージだったのが、最近ではセキュリティーの強化を理由にクラウドを選択されるケースが増えているようです。
 このようにクラウドを取り巻く環境は日々改善されると共に、利用される流れはますます加速しているように思います。
 IT事業者として、クラウドに対する知識をキャッチアップすると共に、上手にクラウドを活用することが必要不可欠だと再認識いたしました。

参考サイト

Google Cloud Summit '18 in 大阪
https://cloudplatformonline.com/2018-Summit-Osaka-Home.html

GCP プロダクトとサービス
https://cloud.google.com/products/ 

MAGELLAN BLOCKS
https://www.magellanic-clouds.com/blocks/

GCP™ を活用したAI・機械学習総合ソリューションプラットフォーム 「GennAI」を発表
https://www.cloud-ace.jp/pages/gennai-press01/

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