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人材育成支援|レポート Human Resource Development Support

ITトレンド調査「CEATEC JAPAN 2017」(エフ・エスソフトウェア開発)

2017年11月09日

CEATEC2017_01

見学者:エフ・エスソフトウェア開発株式会社 荒木 さくら

見学展示会概要

私がITトレンド調査として見学した展示会は、平成29年10月3日(火)~10月6日(金)の4日間、幕張メッセで開催されたCEATEC JAPAN 2017です。

CEATEC JAPANは政策・産業・技術を連携し、業種や業界の垣根を超えた共創が求められている現代において、IoT、ビッグデータ、AIなど先進的技術を活用した製品やサービス、テクノロジーを様々な分野を通して体験したり聴いたり知ることができる展示会です。

この展示会は今後の新たなビジネスを創り出し、技術や情報の交流を通して課題や解決策の提案をすることで産業を発展させていき社会の貢献へつなげることを促す、という趣旨で開催されています。

今回は主に私が見学した10月3日(火)の内容について報告します。

報告

展示会場全体の構成

「社会・街」「家・ライフスタイル」「デバイス・ソフトウェア」「特別テーマ」の4エリアに分かれた展示と、同時開催イベント All about PHOTONICS 、4日間で100を超える講演や研究開発の発表が用意されたコンファレンス会場で、展示会全体が構成されていました。

1つ1つのエリアでは、展示されている製品・サービス分野の幅がとても広く、「デバイス・ソフトウェア」エリアのIoTを支えるテクノロジ・ソフトウェアサービスはもちろん、「社会・街」エリアでは公共交通、産業・建築機器、セキュリティ・データマネジメント、「家・ライフスタイル」エリアはウェアラブルからフィットネスやヘルスケアなど様々な分野のモノが展示されていました。

特に広かった「特別テーマ」エリアは、AI-人工知能パビリオン、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会連携PRブース、IoTタウン、イノベーショントークステージなどがあり、さらに細かく複数のテーマに分かれていました。中でもIoTタウンは特に力が入れられていたテーマのようでした。

コンファレンスも4日間に分けて様々な講演がありましたが、私が見学した1日目の主立った講演はIoTやAIの活用、導入事例の講演でした。
また、導入事例の講演だけではなく、IoTを活用していく上での課題や脅威への対策や東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた講演なども行われていました。

展示会のトレンドや注目したもの

やはり展示内容はIoT製品やIoT・AIの活用サービス、また、VRやARを活用したものが多く見受けられました。
また、スマートシティ、スマートホームなど「スマート〇〇」という言葉をよく聞いたように感じました。

「インターネットに繋がっていないものなどもはや存在しないのではないか?」というほど、私たちがよく目にしたり、利用したりするものがIoT製品として展示されていて、中には【 お風呂タイムをIoTで快適に 】というものもあり驚きました。

興味を持った展示

wena project 様 展示ブース

ハイブリッド型スマートウォッチとして展示されていたwena wristは、時計側ではなくバンド側にスマートウォッチの機能や電池が搭載されている、スマートウォッチが展示されておりました。

バンド側に【電子マネーやスマートフォンからの通知を受け取る】等、スマートウォッチの機能を集めたことにより、時計部分のデザインを自由にすることが可能となり、利用者へファッションとしても違和感なく取り入れることのできるデザインになっていました。

さらに、時計部分を自由に付け替えられるようになっていることにも注目しました。普通の腕時計のバンドをこのwena wristに付け替えればスマートウォッチとして使えるようになるので、思い入れのある腕時計や自分好みのものにできるのは嬉しい点だと思いました。

スマートウォッチというと硬くメカニカルな見た目やスポーツ向きの見た目のものが多いですが、wena wristは女性のファッションにも合わせやすそうな、おしゃれで可愛い見た目のものもあるので、女性にも良い製品だなと思いました。

KOA株式会社 様 展示ブース

初めにヘッドマウントディスプレイを装着し、小さい頃シャボン玉を飛ばして遊ぶ時によく使用した吹き具に見立てた丸い穴の空いたコントローラーに息を吹きかけるとVR映像の中にシャボン玉を作ることができるというものでした。

前後、左右、上下どの方向に向かって吹いても飛ばすことができ、勢いよく吹けば小さなシャボン玉がたくさん飛び、ゆっくり長く吹けば大きなシャボン玉を作って飛ばすことができて、本物のような感覚で操作することができました。

ヘッドマウントディスプレイをつけたときは前が見えないのに正確な位置に息を吹き込めるのかがよくわからなかったのですが、実際にやってみるとVR映像の中に見えている吹き具が持っているコントローラーに合わせて動くので、映像の中の吹き具を口元に持ってくるようにして、そのまま吹けばその通り穴の中に息を吹き込むことができました。

私は初めてこの展示会でVRを体験しましたが、息を利用して映像の中に入ることのできる新しい感覚のゲームとして発展して行くと面白そうだなと思いました。

他にも「風」に注目していて、風をセンサーで感知して可視化できるwindgraphyという技術を用いた大きなパネルも展示されていました。
Unityと連携させて実際の風の強さや吹いた位置に伴って桜が散ったり、水面に波紋が広がったりといった映像を操作することができるようになっていました。パネルに向かってうちわを扇いで実演されていて、スタッフの方とお話ししたところwindgraphyは微風向きのようです。見える化することで風の観測以外にもエンターテイメントに活用して行きたいとのことでした。

株式会社アスカネット 様 展示ブース

個人的に興味深いと感じた展示が、エアリアルイメージングプレートという空中に映し出される映像や動画を、触ることのできるSF映画の世界のようなデバイスでした。
空中に映像を映し出すだけのものはニュースなどで見たことがありましたが、空中に浮いていて画面に”触ることができる”ということがとても魅力的だと思いました。

実際に見て、触れてみると(直接触れられないので何も触れていませんが)、映し出されている画面自体は鮮明ではないものの、空中でスマートフォンやタブレットのように指をスワイプしてページをめくることができ、ピンチイン・ピンチアウトで拡大縮小も可能で驚かされました。
角度により見える範囲が決まっていて、操作している本人以外は画面がそこにあるように見えないため操作している人を側から見ると何をしているのだろう、と不思議な気持ちになります。
直接画面に触れないということで医療現場や衛生管理の厳しい場所での利用などを目指しているそうです。

浮いている画面を触れるディスプレイの他にも8Kや映し出されたものが立体的に見えるものなど、特殊なディスプレイ系の展示も多数あったように思います。

じっくり見ることができませんでしたが、家電からロボットまであり、他にもVRで競技用の車椅子のスピードを体験できるようなものやオリンピック・パラリンピック向けの展示は2020年にオリンピック、パラリンピックを控えた現在ならではだなと感じました。

コンファレンス

IoT、AI時代の「データを駆使した次世代農業の展開に向けて」

実際に農業をしている現場の現状・課題や、農業とICTの可能性についてのとても興味深いお話を聴くことができました。

「株式会社サラダボウル」は農業の経営者を育てることで日本の農業を発展させていきたいという考えから2014年に設立された会社です。

農作業する人や場所を増やしていくだけではなく、マネジメントしていかないといけない、と農業の現状や課題として以下のようなことを仰っていました。

  • 農業は劇的にここ3年で変化しており、今後3年でさらに変わっていくのではないか
  • 新しい農業で、品質は単価の管理もオートメーション(自動化)、IoTの活用をすることで農業の現場が変わり、農業をする人たちの働き方も変わる
  • 農業をビジネスにした事によって雇用数も500人増えたが、その反面ビジネス化にともない、既存農家からの厳しい意見なども初めは聞こえていたが、徐々に形になって来ていてもっと新しい農業が広まることを望んでいる
  • 農業ICTのおかげで新しい農業を展開できるようになったのではないだろうか
  • 4~5年前までは、データを活用するのではなく、実際に畑に行き、手を動かす作業、生産管理をしていた、それらをデータ化したことにより農作業全体の効率が良くなった
  • マーケティング→農業(生産設計→生産管理)→流通→販売という流れが農業にはある
    • これは普通の業務と何ら変わらない
    • これは農業も他の企業、ビジネスと変わらない
  • 今後は環境などのデータも活用して農業をマネジメントできるようにしたい

農業は私たちの生活には必要不可欠なものであるにもかかわらず農業事業者は減り続けているのが現状です。私は、松江市だけでも畑や田んぼはここ数年でもさらに減ったように感じています。

今までの農業を続けていけばさらに衰退していくことが予想される、だからこそ「新しい農業」(農業ICT、データ化、自動化)に力を入れるべきではないかということを、農業を実際にされている方からの貴重なお話から感じることができました。

この講演を聴いて、今までの農業をしていた方たちから新しい農業を受け入れてもらうことがかなり難しく、そこをどう乗り越えていくのかが大きな課題であり、「新しい農業」に携わる若い人たち、またITを利用して農業を発展させていくことのできる人たちの力も必要とされているのではないかと感じました。

IoT時代に求められるサイバーセキュリティ
パネルディスカッション:IoTを取り巻くセキュリティの課題と提言

この講演では、現代はIoTが広く活用される時代であり、活用する人々の生活が豊かなることは良いことであると同時にIoTの汎用性が広まれば広まるほどに生活に脅威が増えていく、ということを聴くことができ、パネルディスカッションでは以下のようなことが話されていました。

  • IoTでつなげる、ということのメリットを考えなければならない
  • 脅威・課題とは考慮していなかったことが発生すること。私たちの命に関わるような問題も出てくる
  • 問題が発生した際にモノは責任を取ることができないため、システムの安全性をしっかりしていかないといけない
  • IoTはクラウドやサーバ・デバイス間、デバイス・モノ間、で問題が発生する可能性がある
  • 問題というのは主にハッキングされること
  • IoT製品の脆弱性が増加していることに困っているが、それに対応できるセキュリティを理解している人が少ないということも問題になっている
  • 今まで製品を作っていた人たちのセキュリティの知識が豊富なわけではないし、セキュリティに関しての勉強をする時間やお金、全体を通してコストパフォーマンスが悪く、安全なモノほど高価格なものになってしまい買ってもらいにくくなってしまうという現状

私も以前からIoTを活用した家電や自動運転機能のある自動車など、便利になることは良いことだけれど、事故などが起こった場合に責任はどうなるのか、本当に安全であるのか、というのを気にしていました。この講演で聴いた通り様々な問題が潜んでいて、少し怖いと感じました。

IoTでつなげるということのメリットを考え、脅威や課題に対して消費者や開発側からの目線で私たちはどう対応していくべきなのかを知ることができたように思います。

所感

展示会・会場全体を通して感じたこと

来場者は時折女性も見かけましたがやはり男性が多かったです。学生服を着た高校生くらいの学生数人の団体もいたことに少し驚きました。

聴きたい講演や展示の数も考えるとさすがに1日ではしっかり回りきることはできませんでした。
コンファレンスの日程も合間なく組まれていたため聴きたい講演が重なってしまうとどちらかを諦めなければならないのは残念でした。

聴きたい講演と講演の間で展示エリアを見る、といった計画を立てていましたが、幕張メッセという会場自体も初めてだったため終始忙しなく動き回っていました。

コンファレンス聴講は事前予約制でしたが満席であっても係の方に聞けば立ち見にはなりますが途中入場もできたので、予定していなかった講演も聴くことができました。

 CEATEC JAPAN 2017という展示会について

IoTやAI製品・サービスを活用して何ができるのか、必要とされているものはどういったものなのかなどを発見することができると思っていましたが、既に様々なモノが人々の生活を豊かにし、つながりを持ち、最新技術を用いるなどして新しいモノが創られ続けていることを見学して実感しました。

この展示会で最新・最先端のモノを間近で体験見学することができました。
テレビやネットのニュースなどで最新技術が開発された、等と見ていたものが、CEATEC JAPANで多くの人たちに実際に発信され広まり、展示会で見たり聴いたりしたものが後に私たちの生活の中で当たり前のように見かけるようになるのだろうと思うと少しワクワクしてきます。

モノがインターネットにつながっていることはもう当然になっていて、どんなものをインターネットやITと連携させれば便利なのか、ということを考えていくことが大事なのだと感じました。かといって便利ということが誰に、どう便利になるのか、それが本当に必要なのかをはっきりさせないと活用することは難しいということも感じました。

最後に

今回の若手エンジニアITトレンド調査を通して展示会見学で得たITに関する知識や流行、企業の方とお話しすること、講演で聞いたことを今後の業務に活かしていきたいです。

また報告書としてまとめることなど様々な貴重な体験をすることができ、このような機会をいただけたことを感謝しています。ありがとうございました。

ITOC記入情報

今回の報告書は、「平成29年度若手エンジニアITトレンド調査委託」として島根県内IT企業に依頼しました。

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