しまねソフト研究開発センターでは、株式会社藤井基礎設計事務所と「機械学習による地すべりの崩壊予測プログラム開発」というテーマで共同研究を行いました。以下、この取り組みについて、当社からのレポートを紹介します。

1.共同研究概要

  1. 共同研究の題目
    過去の降雨量と地すべりのデータから機械学習による予測モデルを作成し、現在進行中の地すべりが崩壊に到達する時刻を予測するプログラムを開発する。
  2. 共同研究の目的
    地域の住民への避難情報や、現地で常時監視を続ける技術者の負担軽減・安全確保の実現。
  3. 共同研究の内容及び目標
    従来の崩壊予測は技術者の経験によるところが多く、現場判断が困難であることから、崩壊予測プログラムを開発し、助言ツールとして活用する。同時に、今回の研究を通じて社内のプログラマーの育成・スキルアップに繋げる。

2.研究実施期間

平成30年11月~平成31年3月

3.共同研究の成果から得られたこと、分かったこと   

  1. 雨量・地すべりデータの収集・整理
    本研究は過去の実際に動いた地すべり変位の観測データを教師データとして使用した。しかし地すべり現場では機器トラブルやメンテナンス等様々の要因で必ずしも連続した観測データが得られるわけではないため、データの補間や整形が必要であった。データの利用にはこのような注意点があることもわかり、実際の運用上の留意点として知見を得た。
  2. 雨量が要因となる崩壊予測の実現
    今回の取組みの結果、過去の雨量と観測データから機械学習による予測モデルを作成することで、現在進行中の地すべりにおける数時間先の変位を予測できる可能性がみえてきた。今後はこの予測プログラムを実際の現場において活用し、更に知見を深めたい。

  3. 分かりやすいグラフ表示
    緊急時の判断を支援するためには、予測結果をグラフなどで分かりやすく表示する必要性がある。その為土木の専門家ではないしまねソフト研究開発センターの皆様に表現方法など多くのアドバイスをいただきながら、一般の方々からみても直観的に分かりやすいグラフを作成するよう努めた。

藤井基礎設計 共同研究グラフ


作成した観測グラフ

・赤:観測値(教師データ)
・緑:機械学習による予測値(出力データ)
・青:観測雨量(教師データ)
・黄:予報雨量(入力データ)

4.共同研究を通じて得たこと

しまねソフト研究開発センターとの共同研究を通して、雨が要因で発生する地すべりの予測を、機械学習を用いて実現する可能性がみえてきた。また、共同研究のなかで、プログラミング経験ほぼゼロの社員が新しいプログラミング言語(Python)を学習し、他の言語(C,C++,JAVA,GAS)の習得が容易となるなど、スキルアップに繋がった。今後は現場での運用しながら崩壊予測の精度を向上させたい。

担当研究員からのコメント

しまねソフト研究開発センター 専門研究員 木村 忍

この共同研究では目標が二つあり、一つは「崩壊予測プログラムの開発」で、もう一つは「人材育成」でした。

崩壊予測プログラムの開発は既存のデータを分析しながら行い、期間中に開発はできたものの、データが不足していることから十分な予測精度を得ることはできませんでした。しかし、言い換えれば今後も継続してデータを収集することにより予測精度を向上させる可能性があることでもあり、共同研究終了後も引き続きデータ収集と精度の向上を試みることができる状態になっています。

人材育成については、担当された方がプログラミング経験がほとんどないという状態であったことから、当初非常に不安を感じておられたようでしたが、終了時には自分でデータを整形して機械学習を行い、グラフを用いて可視化することができるまでに成長されていました。

今後、この共同研究の成果が応用され、一般に利用できる製品やサービスとなることを願っています。

お問合せ先

公益財団法人しまね産業振興財団 しまねソフト研究開発センター(担当:徳田)
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