木村研究員01

 

しまねソフト研究開発センターでは、平成27年から先駆的研究として機械学習を研究テーマに掲げており、木村専門研究員はこの立ち上げの時から、県内企業との共同研究や人材育成などの活動をしてもらっています。

今回、木村専門研究員にインタビューを行い、島根における機械学習の黎明期から携わっている経験をもとに、島根で機械学習に取り組む意義や可能性、また県内IT企業へのメッセージなどを語ってもらいました。

(インタビュー日:2020年7月6日)

 

島根に拠点を置き研究活動を行う者として島根に感じる可能性についてどのようにお考えですか

島根は色々な意味で先進地であると感じています。島根では、古いものと新しいものが共存し、人も物も古いものを意識しながら新しいものを取り入れる力が求められます。極端な人口の増加もなく、多くの資本を入れた開発などもないこの地域は、他の地域より多くのものが守られています。一概に「田舎」という一言で表現するものではなく、島根の人々はこの土地にしかないものを考えることができるという強さを持っていると感じています。

20年前であれば、地方で新しい技術の情報を集めるためには多くのコストが必要でした。しかし、今では多くの情報がインターネット上にあり、IT技術に関することであれば、正しく検索することで、得られる情報は都会と大きな差がなくなってきています。
もっと言えば、収集できる情報は海外とも大きな差がなくなっていて、検索する能力が目的達成に欠かせないものになっています。このような状況において、地方であっても語学力の必要性と優位性が確実に増してきていると言えます。

また、最近の新型コロナウイルス感染症は、人々の仕事や生活の価値観を変えつつあります。例えば、これまで都会と地方の関係を議論すれば、格差が論じられることが多くありました。しかし、以前よりそれぞれの土地の特徴に着目するという考え方が浸透することで、島根にも多くの可能性を見つけられるようになるのではないでしょうか。

地方では多くの人に関するデータを集めようとした場合、都会に劣るところがあるかもしれません。しかし、ここ島根には新しい技術を試すフィールドとなる自然や土地が豊富にあります。ドローンやIoTなど実体を伴う技術、また遠隔医療などの新しい技術は、それらの技術を必要とする現場において、実際に試行錯誤を重ねることで、よりニーズに合ったサービスへと昇華させていくことができます。

IT技術により価値を創出していくには、きちんと通信インフラが整備され情報収集ができる環境、そして心の豊かさを育む自然や人と触れ合う環境が整っている必要があります。それが整いつつある島根というのは、とても魅力的な環境であると感じています。

木村研究員02

 

島根で機械学習に取り組む意義・可能性、今後力をいれていくべきテーマについてお聞かせください

機械学習に取り組むにあたり、重要な要素が3点あると考えています。

  1. 機械学習に必要なデータ収集
  2. 機械学習の適用場所を考える業務知識
  3. 予測を活用する想像力

まず、“機械学習に必要なデータ収集”ですが、島根では今でも手書きの帳票やFAXなど紙に依存する業務が多く残っているため、機械学習の前に業務のデジタル化に取り組む必要があります。これは遅れているという悪い見方をするのではなく、好機だと見ることもできます。一般的に非効率であると言われている紙に頼って仕事をしていても利益が出ている業種にデジタルの力を融合することができれば、事業が改善することは必至であり、その後のシステム化に向けた心理的障壁がとても低くなると考えられます。

次に、“機械学習の適用場所を考える業務知識”についてですが、これも島根では同じ地域に住む人同士の繋がりが残っていることから、業務知識を持った人とITエンジニアがお互い顔の見える位置で話をすることができる土台があります。機械学習の適用場所を正しく見出していくためには、この両者の円滑なコミュニケーションがとても重要になります。

そして、最後の“予測を活用する想像力”についてですが、島根には都会地のようなアミューズメント施設や娯楽などはそれほど多くありません。ですが、仕事や通勤時間などは都会地よりも短く、プライベートの時間は十分にあります。また、余暇には自然に触れ合う機会もたくさんありますので、様々なインスピレーションを得やすい環境があると思います。この環境は、“データを学習して予測する”という、これまでになかった技術を活用する考え方を養うのに最適な土地であると考えています。


未開拓地の可能性は無限大です。

 

県内IT企業の皆様と一緒に取り組みたいこと、島根で働くエンジニアの方へメッセージをお願いします

新しい技術に積極的に取り組むということは、お金以上に価値のあることだと考えています。ただ、一足飛びに結果を出せることではありませんので、様々な事例の情報を収集し、実際に手を動かし、新しい価値を生み出す準備をする必要があります。

そのために、しまねソフト研究開発センターではシーズとニーズのマッチングやPoC(概念実証)の支援や技術指導を行っています。独学で0を1にする力を身につけるのはとても難しいことなので、0から1への時間の短縮、成長を加速するお手伝いをさせていただきたいと思っております。

また、機械学習技術を利用するにあたり、多くのオープンソースソフトウェアを利用します。そこで、取り組みにより得た知見は積極的にアウトプットすることをお勧めします。アウトプットするということは、自分たちの価値を知ってもらい、高い技術を持ったエンジニアと交流する機会が増えるなど多くの結果を得ることができます。しまねソフト研究開発センターとしては、そのようなエンジニアの活動支援にも貢献していきたいと考えています。

 

プロフィール

松江工業高校電気科を卒業し、日立製作所関連会社にて発電所の電気制御エンジニアとして業務に従事するかたわら独学でプログラミングを習得。そして、業務で使用するために作成したプログラムをフリーウェアとして公開すると、様々な雑誌に掲載され、通算で40万回以上ダウンロードされ、企業の研修などで使用された実績がある。その後、島根にUターンすると地域のITコミュニティ活動に積極的に参加し、コミュニティ活動を支援しながら技術者向けイベントの継続的な開催に貢献。

現在は、しまねソフト研究開発センターの研究員として機械学習の基礎を指導するとともに、電気制御エンジニアであった経験を活かし電気関連企業で利用するAIシステムの受託開発を個人事業主として行っている。

【専門分野】

・機械学習
 テーブルデータ、画像データ、音声データの識別、数値予測
・プログラミング(Python, Ruby, PHPほか)
・電気回路
・シーケンス制御

【主な研究実績】

2004年
第17回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会
若狭湾エネルギー研究センターにおけるデータベースを用いた加速器運用管理システムの構築
http://www.werc.or.jp/research/kenkyuseika_ronbun/ronbun_16.html

2017年
機械学習によるサーバの監視・異常検知のためのログやリソースデータの分析
https://www.s-itoc.jp/activity/research/ml/812

2018年
機械学習活用による受発注業務の効率化及び負担軽減(卸売事業)
https://www.s-itoc.jp/activity/research/ml/783

2019年
機械学習を用いたサポート業務改善のための問い合わせデータ分析
https://www.s-itoc.jp/activity/research/ml/847

2019年
機械学習による地すべりの崩壊予測プログラム開発
https://www.s-itoc.jp/activity/research/ml/848

2019年
電気配線図における画像認識による電気器具の抽出について
https://www.s-itoc.jp/report/reaserch_results/966