Rubyビジネス創出展2019Top

2019年7月19日、プログラミング言語「Ruby」によるビジネス創出の機会・場を提供するイベント「Rubyビジネス創出展2019」が開催されました。今回のRubyビジネス創出展のテーマは「mruby/c」で、当日は“Rubyの父”であるまつもとゆきひろ氏による基調講演をはじめ、講演や事例紹介、参加型イベントが行われました。以下、当日のイベントの様子と講演についてレポートいたします。

 

目次

 

当日の模様

基調講演:「Rubyの未来」 Ruby開発者/Rubyアソシエーション  理事長 まつもとゆきひろ 氏


“Rubyの父”で知られる「Matz」こと、まつもとゆきひろ氏は、プログラミング言語「Ruby」の現状と展望について基調講演を行いました。Rubyにおける変遷を「ハイプ・サイクル」を例に、「技術に対する期待」と「時間の経過」を軸として振り返り、現状は「幻滅期」を過ぎて「生産性の安定期」に入りつつあると説明がありました。

また、Rubyの価値として「小さなチームで開発しやすい」「柔軟性」「高い生産性」を挙げており、具体的には「少人数で高い生産性を求められるスタートアップや新サービスの開発に最適」であることを提示し、魅力的な開発言語でありつづけることがRubyの未来であると話しました。さらに、組込みソフトウェア開発においても「mruby」「mruby/c」の特性や活用可能性に言及され、今回の基調講演でもRubyの一貫した設計思想を強く感じることができました。

講演:「SenStickを活用した研究事例紹介」/国立学校法人九州大学  大学院システム情報科学研究院  情報知能工学専攻 教授 荒川 豊 氏


同大学の荒川豊氏は「SenStickを活用した研究事例紹介」と題して、研究している「ヒューマノフィリックシステム」から、センサーによる行動認識から行動変容を含むIoTセンシングの研究事例を紹介されました。

「ヒューマノフィリックシステム」とは、実世界からのセンシング技術とクラウドでのデータ処理技術、その間を結ぶネットワーク技術という情報領域の多様な技術を組み合わせ、人に寄り添うサイバーフィジカルシステム(CPS: Cyber-Physical Systems)です。IoTセンシングの潮流として、今後は複数のセンサデータを取得・記録し、機械学習で分析・分類をしながら統計処理を行われると語りました。

また、マルチセンシングボードSenStickを活用した研究事例として、「剣道上達支援の打突動作認識」を紹介され、剣道において最も一般的な「面」「突き」「胴」「小手」の 4 種類と打突箇所に左右を加えた 8 種類を対象に機械学習を用いた評価について紹介されました。荒川氏は、SenStickと「mruby/c」の活用可能性について、「省電力化」「センサー間通信の円滑化」「センシングデータの一次処理」が挙げられ、小型センサーの活用とエッジコンピューティングの発達が進む中、「mruby/c」による効率的な組込みソフトウェア開発に期待すると語りました。

事例紹介:「島根県のプログラミング教育について」/いわみプログラミング少年団 代表 高田 清秀 氏

「いわみプログラミング少年団」で代表を務める高田氏は、島根県におけるプログラミング教育の取り組み事例としてプログラミング体験教室を紹介しました。「いわみプログラミング少年団」は、ビジュアル言語「スモウルビー」を学ぶプログラミング体験教室であり、これまでに小・中学生が200名以上、高校生が20名程度ほど参加しており、同団体の会員として所属する生徒は60名を超えていると語りました。高田氏は、小・中学生がプログラミングに触れる機会を創出し、会員の中には島根県内のIT企業に就職するなど、将来のキャリア形成にも寄与していると話しました。

取り組みにおける課題として、2020年度に必修化する「プログラミング教育」に対して、学校教育の関係者や保護者が「プログラミング言語を学ぶ」という誤解を招いており、本来の「プログラミング的思考」を学ぶ趣旨から外れていると言います。そこで「いわみプログラミング少年団」では、プログラミングに興味が無かったり自らのモチベーションによる参加でない場合、「スモウルビー」ではなくレゴや折り紙など積極的に与え、プログラミングに対する嫌悪感を与えないように配慮していると語りました。プログラミング教育に対する関心が高まる中、参加者が夢中になるようなプログラミング体験を創造する必要があることを、今回の事例紹介で強く感じることができました。

講演:「mruby/c を利用した教育教材の紹介」/国立学校法人九州工業大学 大学院情報工学研究院 知的システム工学研究系 准教授 田中 和明 氏

「mruby/c」の共同開発者である同大学の田中氏は、「mruby/c」を組込みシステム向けの開発言語として、mrubyよりも実行時に必要なメモリ量を少なく、ウェアラブル端末などのIoTに最適であると紹介しました。

田中氏は、組込みシステム開発における課題として、ハードウェアの知識が求められること、制御プログラムにおけるリアルタイム性・ハードウェアの制約に合わせた要求のタイミングを合わせるのが非常に困難であると語りました。

また、一般的に多くの組込みシステムで実装されているC言語は、良いプログラムを作成するには長年の開発経験が求められるため、人材確保や開発の継続性に乏しいことから、田中氏はRubyの可読性の高さに着目し、機能を制限することで小型化した「mruby」「mruby/c」を開発した経緯であると語りました。

mruby/cを利用した教育教材として、島根県「最先端ITキャンプ in SHIMANE」、福岡県「SSH事業[Super Science High school事業]」、アメリカおよびインドで開催する「IoT WorkShop」での事例を紹介しました。いずれも「mruby」「mruby/c」を用いた制御を行い、小・中学生向けには「ロボットカー」を教材にするなど、参加者に応じてカリキュラムで学習していると語りました。「mruby/c」が動作するマイコンボードとして、「SenStick」「RBoard」「ILC Air Kit」等を紹介し、今後も「mruby/c」が広がっていくことに期待を寄せていました。

事例紹介:「旭日酒造(島根県)におけるmruby/c の適用事例」/株式会社モンスター・ラボ 島根開発拠点 羽角 均 氏

同社の羽角氏は、島根県出雲市の「旭日酒造」で醸造温度管理システムを「mruby/c」によって開発した事例を紹介し、IoTにおける利用価値やマイコンを制御できるようになるまでの道のりを話しました。

まず羽角氏は、マイコンの特徴として「電源を入れるとすぐに起動すること」「電力消費が少ないこと」を挙げ、設置環境に左右されない高い可用性があると述べました。

酒造温度管理システムについて、旭日酒造の麹室(こうじむろ)で温度・湿度管理を細かく調整したいという要望を受け、センサーによる温度・湿度管理+モバイルアプリケーションによって、杜氏へデータ表示を行う取り組みをスタートしたと述べました。開発当初は、通信環境の調整でスムーズに運用できなかったものの、「mruby/c」を用いることでミニマルなアーキテクチャを構築することができたと羽角氏は話しました。

羽角氏は、IoTの課題としてソフトウェアの開発範囲が広い上、動作しない原因をハードウェアとソフトウェアで切り分けるのが難しいと語りました。一方で「mruby/c」は可読性が高く、コードが短いのでプログラム全体を見渡せると述べ、旭日酒造の現場でプログラムを修正する際にヒューマンエラーが少ないことを挙げました。

今後「mruby/c」に取り組むエンジニアに向けて、フロントエンドの開発者であれば電気回路や3Dプリンタなど学ぶ必要性を、組込みシステムの開発者であればクラウド側の開発の軸足をおく必要性があると語りました。

イベント:「mruby/c」体験セミナー

実際に「mruby/c」に触れて興味・関心を持ってもらうことを目的とした体験セミナー。
教材のマイコンボードは「Cypress PSoC5LP」で、LED制御、圧電スピーカーの制御を行いました。

体験セミナー2


続いて、同じくこのイベントに参加された 株式会社 島根情報処理センター 小倉さんにも感想を書いてきただきました。

Rubyビジネス創出展2019 参加報告書

報告者
株式会社島根情報処理センター
経営推進部 ICT推進室 小倉 由弘

講演

「Rubyの未来」 Ruby開発者 Rubyアソシエーション  理事長  まつもとゆきひろ 氏

概要:今までのRubyの歴史を振り返りながら今後のRubyについて

所感:Rubyの歴史について今まで触れたことがありませんでしたが、一つ一つの出来事が今のRubyに結び付いているように感じました。Railsに関しても触れられており、開発効率が良く短期間で開発ができるので、一人でWebアプリを作成することが多い私も愛用しています。一人のユーザーとして非常に興味深いお話を聞くことができました。

 まつもとゆきひろ氏1 300   まつもとゆきひろ氏2 300 

「SenStickを活用した研究事例紹介」 国立大学法人九州大学 大学院システム情報科学研究院 教授  荒川 豊 氏

概要:SenStickを使用した研究事例の紹介として箸や剣道、日常の動きに使用した例を挙げていただきました。

所感:SenStickについて、今までの私の認識ではセンサーが沢山乗っていてBluetoothによる通信ができるデバイス程度としか認識していませんでしたが、実際は思っていたよりもかなり小型で、展示ブースにも実物があり、こんな小さなボディに多くのセンサーが搭載されているのかと驚愕しました。以前は値段が高いという事もあり、あまり注目はしていませんでしたが、あれだけの機能を搭載していながらあの大きさを実現する点に非常に感心いたしました。
また、Bluetoothを搭載しているという事もあり、かなり高速な通信を実現しているため、運動する際の加速度の取得にもかなり向いているという事が分かりました。

 荒川 豊氏 講演1   荒川 豊氏 講演2 

「島根県のプログラミング教育について」 いわみプログラミング少年団 代表 高田 清秀 氏

概要:島根県内で行っているプログラミング教育の事例から、学生に教える際のコツまで紹介していただきました。

所感:県内でどのようなプログラミング教育が行われているのか正直把握していませんでしたが、多くの地域で実施されており、私の地元の雲南市でもプログラミング教育を行われているという事を今回初めて知り、機会があれば是非お手伝いさせて頂きたいと思います。

 高田 清秀 氏1   高田 清秀 氏2 

「mruby/cを利用した教育教材の紹介」 国立大学法人九州工業大学 大学院情報工学研究院 准教授     田中 和明 氏

概要:マイコンやmruby、mruby/cに関する説明があり、今までmruby/cを使用した教育を日本だけでなく海外でも行った事例を紹介していただきました。

所感:mruby/cはプログラムをよりハードに近くすることにより早く命令を送ることができ、PWM制御なども再現できるようになっているようです。調速機という言葉をはじめて耳にして気になったので調べてみました。たまには機械的な仕組みについて見て理解してみると面白いです。

 田中 和明氏1    田中 和明氏2 

「旭日酒造(島根県)におけるmruby/cの適用事例」 株式会社モンスター・ラボ 島根開発拠点  羽角 均 氏

概要:mruby/cを使用した実際の業務事例を元に、四苦八苦した点やmruby/cの有用性などの話も交えながら紹介していただきました。

所感:私もIOTのシステムを開発する際にどこに原因があるのか、デバイスの電子回路に問題があるのかそれともプログラムか、はたまたサーバーに問題があるのか、よく頭を抱えることがあり、開発に苦労します。Cではなくmruby/cにすると文字列の扱いが容易になるという点に関して思うところがあり共感いたしました。

 羽角  均 氏_1_300   羽角  均 氏_2_300 

展示

  • SBクラウド株式会社

概要:Alibaba Cloudの展示

所感:AWSやAzureと比べて低価格らしいので機会があれば使用してみたい。

Image Search機能を使用したaliexpressの事例を紹介していただき、見事に私のバッグを商品一覧から探し出してくれました。素晴らしい。

  • アルカディア・システムズ株式会社

概要:姿勢を数値で表してくれるシステム

所感:Kinectを使用したシステムで姿勢の良し悪しを見ていただきました。自分でも何となくわかっていましたが私は少し猫背らしいです。

  • リバティ・フィッシュ株式会社

概要:スモウルビー、スモウルボット等の展示

所感:教育関係にはあまり興味がないので何とも言えませんが、Rubyを使用したラズベリーパイのハードウェア制御体験会も開催されているようです。

展示ブース

所感

県外のイベントという事もありかなり道に迷いましたが、無事に会場に到着できました。
mruby/cを大々的に取り上げているという事もあり、mruby/cに関する内容が多かったのではないかと思います。mruby/cのユーザーとして、なかなかこのようなイベントはないと思っているので今回はとてもいい機会となりました。
マイコンプログラムをRubyで書けるという事はRubyエンジニアにとってプログラムできるサービスの幅を広げることができると思っているので、mruby/cの開発をより簡単にできるように私としても及ばずながら協力できるようにしていきたいです。
弊社でも少しずつmruby/cを取り入れ­ながらIoTに尽力していく所存です。